2021年7月30日

シンポジウム・講演会 Webシンポジウム「資源循環経済の実現に向けた取組事例~エネルギーインフラプロジェクトの先進事例と申請まで~」(まとめ)

 

酒川高志氏「分散型エネルギーインフラプロジェクトについて」
総務省・地域力グループ地域政策課

 

▼総務省が目指す地域エネルギーシステムについて

エネルギー事業の立ち上げによる雇用の創出、再生可能エネルギーの利用による温室効果ガスの大幅削減、地域と近い位置でのエネルギーの供給が行われるため、災害時の対応も可能になる。地方公共団体が定める地域の特性を活かしたエネルギー供給事業導入計画(マスタープラン)の策定段階から事業化まで、総務省に窓口を設け、関係各省タスクフォース(農林水産省、資源エネルギー庁、国土交通省、環境省)と連携して徹底したアドバイスを実施。
平成26年度から令和2年度までにマスタープランを策定した自治体は58団体、そのうち事業化をした団体は18団体。
マスタープランを1つも作成していない都道府県もあり、まだまだ少ない。

▼今後の課題

現在分散型エネルギープロジェクトの普及推進に向けたプロジェクトを実施中。
・地方公共団体を中心に金融機関や地域の民間企業などが参画して連携する体制を構築する必要があるため、地方公共団体職員が効率よく導入に向けた検討を行えるように、ハンドブックを作成。全地方公共団体に配布。
・マスタープランを策定した地方公共団体が必要な各省補助金を申請する場合、補助金交付審査時に加点の優遇を図る取り組みも実施。
・総務省に窓口を設け、関係各省庁タスクフォースによるプランの策定段階から事業化までの支援の実施。
・地域におけるエネルギー人材の活用方法として、専門人材派遣に係る財政支援制度として、地域力創造アドバイザーと地域活性化起業人を紹介。

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古網竜也氏「地域アライアンスで進めるエネルギーの地産地消」
鳥取市経済観光部 経済・雇用戦略課

▼鳥取市の取り組み

平成26年度に総務省の分散型エネルギーインフラプロジェクトに取り組み、エネルギーの地産地消・地域内資金循環を目指し、地域電力会社の「株式会社とっとり市民電力」と電源開発事業化支援を行う「とっとり環境エネルギーアライアンス合同会社」官民連携で設立。

▼株式会社とっとり市民電力について

鳥取ガスと鳥取市の官民共同出資で設立。鳥取市の75件の公共施設の高圧契約からスタート。
直近の販売電力量は低圧を中心に増加し、事業開始当初に比べ約10倍程度の販売電力量になっている。
地域内経済循環の推進効果としては、電力小売のみで事業開始後5年間で累計約30億以上の地域経済循環効果を創出。また着実に従業員数も増え、雇用の創出をしている。
電源開発事業も順調に稼働しており、地域の経済循環に貢献。

▼今後の課題

エネルギーの地産地消実現に向けた地元電源調達
電力供給先が増加する一方、地産電源の割合が減少傾向になる。地域の再エネ発電所から電源調達を推進するしているが、新しい電源開発は数年を要するため、地産地消によるエネルギー循環経済に向けた地元電源の調達は大きな課題がある。
・再エネ賦存量が多い中山間地域は送配電設備が脆弱
・地域密着型事業展開によるブランド力
・電力小売事業だけでは価格競争に陥り、消耗戦になる。シュタットベルケ的事業展開を目指す。

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阿部亘氏「最上町における木質バイオマスを用いた地域熱供給事業について」
最上町役場・交流推進課エネルギー産業推進室

 

▼最上町の取り組み

森林整備(間伐)が進まない状況を受け、補助事業の活用と間伐材の利用で森林所有者の整備負担金の拠出なしで、間伐作業ができる仕組みを構築し、間伐材を木質バイオマスの燃料利用し現金収入に繋げる。
木質チップの利用先として、町内の医療福祉施設や民間の老人ホームが一体となった「ウエルネスプラザもがみ」に、木質バイオマスボイラを設置し熱を供給。
木質チップを利用することで従来化石燃料の利用を削減し、化石燃料購入料金を木質チップの購入料金に置き換え、チップ購入代金が山の所有者へ流れる仕組み。

▼熱供給事業について

「ウエルネスプラザもがみ」から3.5kmの熱導管を伸ばし、熱供給エリアを広げるプランを作成。
 ⇒総事業費が現実的ではなく、熱エネルギープラントを増やし部分的に熱供給事業エリアを増やしていく 
町有地の土地の有効活用として、若者定住環境モデルタウンを計画、熱供給をおこなう。
公共施設での熱の供給をしてきたが、一般人にも熱を供給する事業となった。

▼今後の課題

・ウエルネスプラザもがみ近郊で熱供給事業が止まってしまっている。
・熱を供給する民間事業体の設立を検討していきたい。

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西野孝典氏「~士幌町~脱炭素スマートグリッド構築事業」
士幌町・産業復興課

▼士幌町の取り組み

北海道東部地震にともなうブラックアウトが発生。早期の電力供給(レジリエンス強化)を図る必要がでてきた。令和元年に分散型エネルギーインフラプロジェクトに取り組み、士幌町脱炭素スマートグリッド構築に関するマスタープランを作成。令和2年に「地域マイクログリッド構築支援事業」を活用し、地域マイクログリッドに向けたマスタープランを作成。
環境への負荷が少ない街づくりと、災害時においても電力供給が可能なレジリエンスが高い地域づくりを進めていく。

 ▼事業イメージ

牧場から排出される家畜糞尿によるメタンガス発酵による発電設備の導入
・遊休地などの利用による自家消費型太陽光勝電の導入
・地域エネルギー会社を設立し、電力系統異常時や他地域内の発電設備の有効活用による電力供給
・JA馬鈴薯コンビナートの発電設備をLNG化するなど省エネルギー・省CO2化を行う
・発電機、太陽光発電設備などはエネルギー会社を設立し、設備保有し運用する
・マイクログリッドを構築し有事の際は、エネルギー会社から地域内へ電力を供給する

▼今後の課題

・2024年度のマイクログリッドの実装に向けて、関係組織により形成するコンソーシアムの運営や士幌町エネルギーシステム&レジリエンス推進協議会・部会の開催・協議を行う。
・新エネルギー会社の設立と事業計画、既存電力系統線を活用したマイクログリッド化システムの構築。詳細の検討を進めたい。

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 【まとめ】

総務省からは国の分散型エネルギーに向けた制度についての紹介を頂き、分散型エネルギーインフラプロジェクトに興味を持たれている地方自治体にも役立つ情報が多く、自治体からは地域新電力、バイオマス熱電併給、マイクログリッド、といった様々な取り組みからの視点で活発な意見交換が展開されました。