2021年2月15日

お知らせ 勉強会的討論ウェビナーを開催しました(まとめ)

勉強会的討論ウェビナー(ZOOM開催)
「地域の可能性をエネルギーから考察する」~バイオマス編~

一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会(略称:JSC-A)は2020年8月から12月にかけて、勉強会的討論ウェビナー「地域の可能性をエネルギーから考察する~バイオマス編~」全5回(コーディネーター:日本総合研究所主席研究員・藻谷浩介氏、JSC-A副代表理事:乾正博氏)を開催しました。

開催の目的

環境汚染、生態系の崩壊、収奪や戦争の原因ともなる化石燃料。
今世界中が、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を進めています。

日本においては、化石燃料の輸入に年間約15.8兆円(2017年実績値)費やしている事実、地方創生、大都市への一極集中、少子高齢化、雇用減、林業の衰退など地域における課題が多く存在します。

全5回からなる本ウェビナーでは、業界から多彩なゲストをお招きし、ディスカッションを通じ、バイオマス発電における日本のグランドデザインを示しました。

 

各回概要(詳細ページを開くにはパスワードが必要です)

第1回「地方の課題」2020/8/18 ⇒ 第1回詳細

藻谷浩介氏(日本総合研究所 主席研究員)「令和時代の国際競争とエネルギー」
乾正博氏(JSC-A 副代表理事)「バイオマス発電、熱利用は必要か?」
相川高信氏(自然エネルギー財団 上級研究員)「バイオマス発電における課題認識~資源量を的確に捉える必要性~」

今後全5回にわたる本ウェビナーの方向性や課題認識を討議しました。
日本はこれだけ多様なのだということを理解しなければいけない、多様な人が多様な判断をすべきであり、自立した主体として各地域がエネルギーはこうすると動くべき、と各地域が自立して市場を創出しなければならないこと、林業や地域便益といった観点からバイオマス発電は必要であり、FITを利用すれば未来の定常状態を実現できることを確認しました。

 

第2回「各市町村の取り組み」2020/9/8 ⇒ 第2回詳細

上山隆浩氏(西粟倉村地方創生推進室 地方創生特任参事)「“百年の森林構想”から“生きるを楽しむ”へ ~だれひとり、取り残さない地方創生の取組」
大鍋直幸氏(内子町森林組合 参事)「地域×林業×バイオマス」
寺岡行雄氏(鹿児島大学農学部 農林環境科学科教授)「林業経営とその可能性」

山の整備の重要性、林業のこれからの役割について議論を交わしました。
現場をよく知る方からしか聞くことのできない発表、議論を経て、自給率が低いことは伸び代が大きいことを意味する、これまでとは発想を転換して林業が自立できる方策を実践しよう、間伐から主伐へマインドを切り替えて木材をもっと使おうと話しました。

 

第3回「発電所の現場から」2020/10/13 ⇒ 第3回詳細

尾地裕一氏(新宮エネルギー株式会社 代表取締役)「発電所の現場から~小規模木質バイオマス発電の導入状況~」
堀口三千年氏(くしま木質バイオマス株式会社 代表取締役)「大生黒潮発電所」

木質バイオマス発電、熱供給を活用した地方創生のこれまでの経緯、現在の状況、今後の課題について議論を交わしました。
現場からの発表で、先駆者としての苦労が並々ならぬものであったこと、地域にもたらした経済的なインパクトの大きさなどが明らかになりました。そこから活発な議論を経て、地域に生まれる経済価値や地域の担う役割を考えると、苦労を乗り越えてようやく作り上げた道筋が、森林国の我が国で木質バイオマス発電および熱供給の普及に繋がればと話しました。

 

第4回「林業×バイオマス」2020/11/10 ⇒ 第4回詳細

長野麻子氏(林野庁 木材利用課長)「これからの木材利用~みんなでウッド・チェンジ~」
今吉光一氏(伊佐愛林有限会社 代表取締役)「再造林への考え方と取組~林業従事者として果たす役割~」
山田尚弘氏(株式会社山田林業 代表取締役)「20年後の林業はどうなっていくのか」

林業の現状、今後の課題について議論を交わしました。
木は元本といえ、燃やし尽くしてその元本を失って、将来高度利用ができるようになったときに戦後のようなハゲ山になっている危険性も指摘され、国土の7割を占める森林を経済という観点でどう活かしていくのか、それをどうやって子孫に繋いでいくのかという視点での議論が展開されました。

 

最終回「バイオマス発電は必要か?」2020/12/15 ⇒ 最終回詳細

中井徳太郎氏(環境省 事務次官)「脱炭素社会構築に向けた環境省の取り組み」

環境省としての2050年、そして長期視点のビジョンをお聞きするとともに、今までの議論を踏まえて藻谷氏からこれからのバイオマス発電のグランドデザインを示していただきました。
地球を一つの生命体ととらえる大きな視点での議論が展開されました。

 

全5回の議論を通じ、バイオマス発電が目的ではなく地域循環共生圏を形成するための一つの手段に過ぎず、発電することだけを考えて取り組むバイオマス事業には意味がないこと、そして自立する地域が増えていくことが全体をよい方向に導くことなど、多くのご参加の方々にもお分かりいただけたのではないでしょうか。

コーディネーター・藻谷浩介氏 所感

一連のセッションを通じて、改めて頭に深く刻まれたことがあります。
第一に、木質バイオマスの利用は、発電だけでなく発生する熱の利用に大きな意味があること。 大規模なものを人里離れた場所に造るよりも、集落ごとに小規模なものを持つ方が有効です。
第二に、木質バイオマス利用は、地域の林業再生の手段の一つであって、逆にバイオマスのために林業があるのではないということ。 林業廃棄物がバイオマスに使われることで、林業者に再造林の資金が戻り、山が再生することに、この話の意味があります。 輸入燃料に依存する「なんちゃってバイオマス」、造林なき皆伐に依存する「焼き畑バイオマス」の横行は、言語道断ですね。
第三に、そうして起こる地域の林業再生は、人が少なく山が多い地域の再生のカギだということ。 化石燃料時代に凋落した山の価値を再び上げるチャンスが、21世紀に巡ってきたのです。それは森林面積の大きい日本の全体の価値を上げることでもあります。
エネルギーは手段であり、目的は地域再生、循環再生、人間再生です。でもエネルギーはそのための、非常に力ある手段です。草の根でも取り組める手段です。 何事もスロースターターの日本ですが、2030年までにどれほどの拡大がみられるか、とても楽しみです。 ありがとうございました。

 

■お問合せ:日本サステイナブルコミュニティ協会 事務局
E-mail:jimukyoku@jsc-a.or.jp TEL:03-6861-7817 FAX:03-5847-7901