2019年11月13日

お知らせ 増田会長が宮崎県串間市のフォーラムで基調講演

増田会長が宮崎県串間市のフォーラムで基調講演
 「地域創生と環境・エネルギー戦略」テーマに地域資源の活用説く

 一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会(JSC-A)の増田寛也・代表理事会長は、JSC-A特別会員の宮崎県串間市からの依頼を受け、同市が11月4日に開催した「地方創生フォーラム」の基調講演講師と、パネルディスカッションのファシリテーターを務めました。同市では昨年、バイオマス発電所の「大生(おおばえ)黒潮発電所」が稼働し、202010月には九州最大規模の風力発電施設が動き出します。こうした再生可能エネルギー施設を観光や研修に活用するほか、定置網や芋ほり体験など地域資源を生かしたエコツーリズムの推進で特色ある地域づくりを目指しています。JSC-Aではこうした活動を応援していきます。

◇「来ればわかる」ではなく、地域の魅力を言葉で表現
 基調講演の演題は「地域創生と環境・エネルギー戦略」。この中で増田会長は「人口減による地方消滅を防ぐには、短絡的な社会増狙い(人口の奪い合い)ではなく自然増の回復が本命」とし、①女性、高齢者、障害者、外国人など誰もが活躍できる地域社会をつくる②「プチ東京化」を目指すのではなく、話題性ととんがりを持った個性と魅力のある地域にする③「来ればわかる」「食べればわかる」ではなく、地域の良さを言葉で「伝える」努力をする――ことが大事だと強調しました。

◇熱活用で新規事業を
 またバイオマス発電については、地域で産出される木材を活用した発電で、同時に生み出される熱を有効活用(熱電併給)することで、キノコ栽培など新しい農業を始めたり、温浴施設を運営したりすることも可能になると話しました。
 太陽光発電、地熱発電、小水力発電、バイオマス発電など地域にある電源を活用することは地域活性化だけでなく、災害時に独自の電源を確保でき、地域をレジリエンス(強靭化)にする効果もあると述べました。

◇林野庁の長野・木材利用課長が「木質バイオマス」テーマに講演
 増田氏の基調講演のあと長野麻子・林野庁木材利用課長が「木質バイオマスエネルギー利用の現状と今後の展開」という演題で講演し、①国土の7割を森林が占める②中国・韓国への輸出に力を入れる③2×4住宅など外材の使用が多い市場に国産木材の良さを訴えたり、従来木材があまり使われなかったビルなどの建物にも木材が使えるようにする「ウッドチェンジ」政策を進める――といった考えを示しました。

パネルディスカッション「地域資源を活用した地方創生」

 休憩をはさんで増田会長をファシリテーターとするパネルディスカッションに入りました。テーマは「地域資源を活用した地方創生」で、パネリストは以下の6人の方です。

長野麻子・林野庁林政部 木材利用課長
佐野詔藏・宮崎県 環境森林部長
堀口三千年・くしま木質バイオマス株式会社代表取締役
竹内一孝・串間ウインドヒル株式会社取締役所長
田上俊光・串間エコツーリズム推進協議会会長
池田誠・株式会社くしまアオイファーム代表取締役社長 

 各パネリストの主な発言は次の通りです。

▽長野麻子・林野庁林政部 木材利用課長
 串間市に参考になる他の自治体の取り組みですが、岡山県真庭市ではCLT(直交集成板)の工場ができ、新たな市場を形成しています。また森が持つ癒し効果などを生かした「森林サービス産業」の研究会を林野庁内に立ち上げました。

▽佐野詔藏・宮崎県環境森林部長
 中国や韓国への木材輸出に力を入れていますが、木造住宅工法の技術移転もセットにして輸出すれば、もっと市場が広がります。国内市場では木造住宅だけでなく非住宅部門でも木材利用を働き掛け、地域経済を活性化させていきたいと考えています。

▽堀口三千年・くしま木質バイオマス株式会社代表取締役
 バイオマス発電所を作ろうと計画してから8年目になりました。機械を入れ替え、様々な試行錯誤を経て発電ノウハウを取得することができました。すでに500600人の方が発電所の見学に来てくれ、地域経済にも貢献できています。

▽竹内一孝・串間ウインドヒル株式会社取締役所長
 串間市にはハブ(鉄柱)とブレード(羽根)を合わせて高さ136メートル余りの風力発電機が23基設置され、202010月に発電を開始します。風力発電に適した場所は実は九州ではすでに開発されていて、残る可能性は洋上風力発電です。風力発電を近くで見たいというニーズはあるので、観光資源にもなると思います。

▽田上俊光・串間エコツーリズム推進協議会会長
 地域にエコツーリズムの経済的効果をもたらすには1~2泊するモデルを構築することが必要です。また農家を質の高い民宿にして外国人も泊まるインバウンド需要を開拓したいと考えています。

▽池田誠・株式会社くしまアオイファーム代表取締役社長
 大きなサツマイモより小さくても甘いサツマイモが香港などでは好まれることを見つけ出し、輸出という新しい市場を開拓しています。以前は1キロ50円程度だったサツマイモの価格は、海外市場が育つことで最近は1キロ7580円になりました。海外市場開拓の恩恵はサツマイモ生産農家にも還元できました。さらに事業を拡大するため発想の異なる地域外の人材『よそ者』を雇い、仕事のやり方を変えていきます。今のビジネスに満足せず、現在10億円ほどの年商を10年後には100億円にする目標を立てています。 

 


【会場から質問と回答】
 最後の15分ほどを使って会場から質問を受け、増田会長が回答しました。

▽島田俊光・串間市長
 串間市を自然エネルギーの街として売り出したいと考えています。地球温暖化に対する危機感を市民とともに私たちはもっと感じる必要があります。企業優先ではなく環境を第一に考えて行動すべきではないでしょうか。

◇人口2万人弱の自治体は循環型社会実現に適している
▽増田寛也・日本サステイナブルコミュニティ協会会長
 世界の人口は数十年後には100億人を超え、アフリカ、南米を中心に食料危機の発生が予想されています。その一方、先進国の中には日本のように人口が減少する国が出てきます。世界は2極化し、環境問題を含め、一律に答えを出せなくなります。こうした難しさはあるにせよ、環境に負荷をかけない循環型社会を築く必要があります。人口が20万~30万人ある都市より、2万人を少し切るくらいの(串間市のような)地域の方が循環型社会を築きやすいと考えています。人口減少が予想される日本ではコンパクトシティー化に取り組む必要があり、循環型社会のモデル地域を形成する意義は大きいと考えています。