2019年10月3日

お知らせ 9月27日関西バイオマス展にて特別講演を行いました

関西バイオマス展で内子バイオマス発電所をテーマに特別講演
安定稼働支える協業体制と地域への経済効果

 一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会(JSC-A)は9月27日(金)、インテックス大阪で開催されていた「関西バイオマス展」で、「内子町バイオマスタウン構想の取組みから地方創生を考える~バイオマスは、山・地域・エネルギーをどう変えるか~」というテーマで特別講演を行いました。具体化に苦しむバイオマスタウン構想が全国的に多い中で、愛媛県内子町では昨年10月、内子バイオマス発電所が完成し、試験操業を重ねる中で安定稼働のためのノウハウを獲得し、今春までに売電を開始しました。その一連の取組みと安定稼働のために必要な協業体制づくりについて関係者を講師に招き紹介しました。

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▽登壇はシン・エナジー、内藤鋼業、内子町森林組合の3者
 登壇したのは①JSC-A副代表理事でエンジニアリング部門を持つシン・エナジーの乾正博社長②内子バイオマス発電所所長でペレット生産も手掛ける内藤鋼業の内藤昌典代表取締役③内子町森林組合の大鍋直幸参事――という3人の講師。
 最初に乾社長がモデレーターとして全体の進め方とJSC-Aがエネルギーを基軸とした持続可能コミュニティーづくりの支援を目的にした団体であることなど概要を説明しました。
 続いて内藤代表取締役が内子町の16,458人と林野率77%など概要を紹介し、内子町バイオマスタウン構想で「森のプロジェクト」として燃料用ペレットの製造と利用が謳われたことが、同社がペレットの生産にかかわる契機だったことを説明しました。ペレット燃料はすでに地元のフィットネスクラブ、小中学校、保育園などで利用が進んでいます。
 発電所の建設計画は2016年6月に作られ、県・町・林業関係者や住民への事業説明を経て2018年5月に起工式、同年10月に竣工式を行いました。初期投資額は12億円で、定格出力は1,115kW。年間計画の燃料消費量は木材ベースで11,500トン、ペレットで5,700トン。

▽高性能林業機械、ドローンなど導入し、林業の効率化図る
 一方、燃料の木材を供給する内子町森林組合の大鍋参事が組合の現状について、2018年の組合員数は3,237人と2010年以降で見ても減少傾向です。こうした状況から抜け出し若者にも魅力のある職場とするため高性能林業機械を積極的に導入し、森林管理と森林資源量の調査のためドローンの導入と技術者の育成を進めていることを説明しました。

 さらに内藤鋼業、シン・エナジーと組んだバイオマス発電所が昨年10月に稼働すると、柱材などに使えず未利用材となっていたD材がバイオマス用燃料として動き出し、2018年のD材出荷量は2,881トンと前年を59%上回り、発電所効果が表れました。「山に捨てざるを得なかった未利用木材が1トン7,000円前後で売れるようになったことは素晴らしい成果だ」と述べました。

 続いて乾社長がシン・エナジーの会社概要を説明したあと、日本の杉を使ったバイオマス発電は発電機内でのタールやクリンカー(高熱によって固まった鉱物性物質)の発生が発電機の円滑な稼働の大きな妨げになってきたことを明らかにしました。様々な研究や実験を地道に重ねた結果、タールとクリンカーの発生を抑えることが出来るようになり、現在の安定稼働につながったと説明しました。

 そのうえで「地域でのプロジェクトを成功させるには、技術を持つ企業と信頼関係を作ったうえで、経営も運営も地域が主体となることが条件」と述べました。

【質問シートを基に質疑応答】
 今回の質疑応答では開場前に質問シートを参加者全員に配布し、講演の途中で回収しました。関心が高いと思われる質問を選んで乾社長が読み上げる形で議論を進めました。

▽質問1:若い木と老木での吸収率はどう違うのですか。
大鍋:樹齢が古くなるとCO2吸収率は確かに落ちるかも知れませんが、大幅なものではありません。

▽質問2:樹皮などが入ったペレットと、樹皮などを除いたホワイトペレットの使い分けはどうしているのですか?
内藤:発電機の生産地のドイツでは樹皮を混ぜないホワイトペレットを主に使っていますが、樹木を有効に活用するには樹皮や枝葉も使ってペレットを作ることが大事です。今年春からは樹皮を混ぜた全木ペレットを使い始めています。

▽質問3:日本の山の木は杉が多いのですが、それを使う技術が今の日本にあるのでしょうか。
乾 :日本にはオーストリアなどからたくさんのバイオマスボイラーが輸入されています。言い換えればこうした分野の機械は日本ではまだ技術が確立されていません。

▽質問4:海外からPKS(パームヤシ殻)などを運んできてバイオマス発電をやるのは問題があるのではないでしょうか。
 :海外からわざわざ船で日本までバイオマス燃料を運ばなくても、日本には豊富な森林資源が全国にあります。これを地域持続のために生かすことが大事です。

▽質問5:ペレットだけでなく、チップは使わないのですか。
乾 ペレットにもチップにもそれぞれの良さがあります。今後はチップをガス化して発電することも挑戦していきたいです。

▽質問6:発電所の見学はできるのですか。
内藤:当社に申し込んでいただければ、見学できます。今年2月から累積するとざっと500人の方が見学に来られています。


乾 :大鍋さん、内藤さん。参加者に贈る言葉をお願いします。
大鍋:小型分散発電所と言っても、1人の力ではできません。関係者の皆さんとタッグを組むことが大事です。
内藤:銀行からたくさんのお金は借りましたがその担保は「事業性担保」でしたので個人の負担はありませんでした。銀行が再生可能エネルギーの将来性をそれだけ評価しているということでしょう。
乾 :未来の子どもたちのために素晴らしい環境と持続可能な地域を残すことが何よりも大事です。再生可能エネルギーを生かすことがそうした未来を築くと考えています。皆さん、本日は本当にありがとうございました。