2018年5月31日

お知らせ 2018年5月15日総会記念講演会 <詳細版>

2018年5月15日総会記念講演会 <詳細版>

基調講演①

<柏木孝夫・代表理事副会長(東京工業大学特命教授)>
「最新の日本エネルギー戦略~これが2050年のグランドデザイン~」

 第5次エネルギー基本計画についてお話します。第1章は「構造的課題と情勢変化、政策に時間軸」、第2章は「2030年に向けた基本的な方針と政策対応」ですが、ここに手を付けると諸外国に新たな国際公約を迫られることになるので、2030年を目標とした数値については4年前に作った第4次エネルギー基本計画の考え方を受け継ぎました。達成されていないものがあれば、進捗度合いを調査して達成するための政策評価を行います。 基本計画の中には「再生可能エネルギー導入加速」という項目が設けられました。私たち日本サステイナブルコミュニティ協会の考え方と一致し、背中を押すものと受け止めています。

◆再生可能エネルギーを主力電源化

 第5次基本計画が第4次と比べ大きく変化した点は、これまで親に手を引かれる子供のように、脇役だった太陽光発電などの再生可能エネルギーが、天然ガス、原子力などと並ぶ主力電源に位置付けられたことです。これは本当に大きな変化なのです。

 主力電源化すると言っている以上、それなりに技術開発も行わなければなりません。 再生可能エネルギーが地域立脚型であることを考えると、エネルギーの面でも中央の政府から自治体に責任が移管されることになります。

 大臣の勉強会という形で、エネルギーの専門家以外の人も入れて立ち上げた「エネルギー情勢懇談会」が、4月中旬に日本の成長戦略ビジョンをまとめました。2030-2050年を見据えたものです。

◆再エネ価格を国際水準に、経済的自立促す

 今回の第5次基本計画の中にはそのビジョンの考え方も反映されています。第3章は「2050年に向けたエネルギー転換への挑戦」と題して「野心的な複線シナリオの採用~あらゆる選択肢の可能性を追求~」を唱っています。

 再生可能エネルギーの課題である経済的自立を促すとともに、脱炭素化の主力電源を目指す――としています。普及のために欠かせない価格水準の低下についても国際水準並みに引き下げると明言しました。FIT(固定価格買取制度)からの早期自立を促す一方、現在問題になっている既存送電網の開放を徹底する方針も打ち出しています。 その一方、火力については「補完電源としての火力容量の維持に取り組む」という位置付けに変わっています。

◆課題はベースロード電源

 1つの課題は原子力をどうするか、という点です。再生可能エネルギーだけで電力を安定供給できるのか。ベースロード電源(季節や天候、昼夜を問わず一定量の電力を安定的に低コストで供給できる電源)が必要ではないか、というものです。

 どちらにしても再生可能エネルギーが増えるほど原子力発電は減っていくでしょう。

 地産地消型の再生可能エネルギーによる発電は送電線を使って電気を遠くまで運ぶ必要が少なくなるでしょう。それは将来、送電線の空き容量が増えることを意味します。

 

 

基調講演②

<黒澤八郎・群馬県上野村村長>

「挑戦と自立の村」の森林・バイオマスを100%使いきる創生戦略

 本日の講演会のテーマである「エネルギーを中心にした地方創生」について、私たちの取り組んでいる例をご紹介したいと思っています。私の村は非常に小さく、人口は1,207人、世帯数は596世帯(ともに2018年5月1日現在)です。私たちの取り組みは人口が小さいからできるもので、“スモールメリット”と呼んでいます。

 大きな自治体の場合は私たちの事例を10倍、100倍して考えていただくか、私たちと同程度の規模のものを10カ所、100カ所つくる想定で考えていただければいいでしょう。

 上野村は群馬県の南西の端にあります。面積は181㎢です。その面積の95%以上が森林で、手つかずの大自然が残る緑豊かな森の郷です。村内には関東一の清流「神流川(かんながわ)」が流れており、その源流域は平成の名水百選(環境省指定)にも選定されました。鮎釣りも盛んです。

 上野村の歴史ですが、かつては江戸幕府の天領であり、鷹狩り用の鷹を将軍家に献上し、御林守(おはやしもり)として、森が育む自然を守り継いできました。 昭和30年代には最大5,000人の人口を擁し、蒟蒻(こんにゃく)生産など農林業も盛んでしたが、高度経済成長期以降、過疎化が進み、村を取り巻く環境は非常に苦しいものとなりました。

 上野村の名前が全国に知られたのが昭和60年に起きた日航ジャンボ機墜落事故です。今も慰霊行事を村の使命として行っています。

◆雇用の場づくりがIターン者呼び込む

 人口ですがピーク時の5,000人に対し今は1,200人余りですから4分の1に減ってしまったことになります。人口の激減期もありましたが、近年は減少率が低くなっています。その背景には、雇用を創出しながらIターン者の受け入れを積極的に進めたことがあります。 国立社会保障・人口問題研究所が2000年(平成12年)時点で2,285人いた上野村の将来人口を予測した数値では2015年には887人、2020年には745人にまで減るという予測でしたから、現在の1,207人はこれを大きく上回る数字なのです。

 その背景には、雇用を創出しながらIターン者の受け入れを積極的に進めていることがあります。村の人口のうち、実に2割に当たる244人がIターン者を中心にした移住者です。それらの移住者が村づくりの様々な面で活躍してくれています。

 私たちは「自立する地域社会」から「持続する地域社会」を目指して村づくりに取り組んでいます。村を残すというより、現に暮らしている人たちのコミュニティーの場である地域を残すという考えです。

 そのためには村の持つ「モノ」の価値の再発見と、その活用に徹底的にこだわり、産業振興と雇用の場の創出をすることが大事です。森へのこだわりは、きのこセンターの規模拡大と民営化、そして産業情報センターを設立となって表れました。

 一方、忘れられた資源の再発見事業では、間伐材の搬出促進、広葉樹の活用、製材所の整備を行い、木質ペレット工場と木材加工施設を作りました。さらにはこのペレットを使ったバイオマス発電とバイオマスボイラーを設置・稼働させ、ついにエネルギーの地産地消にたどり着きました。

◆国有林の木材も活用

 村内の森林は広葉樹が63%、針葉樹が35%です。これを所有形態で見た場合、民有林が57%で国有林が43%です。森林資源の活用事業を進めるうえで国有林から出る木材資源の有効活用を図ることが必要だと考え、国有林側と協定を結び、村の事業、そしてエネルギー資源として供給することについて協定を結びました。

 昭和30年代までは木材を木炭に加工する事業が村内でも盛んでした。その木炭を現代風のバイオマス発電に置き換えたのが現在の取り組みなのです。 山の木を育てる、木を切るという仕事はなかなか収入が得られにくい仕事です。また山の持ち主、森林の所有者も全く還元されない状況が続いていた。上野村は山を守るために補助制度など上乗せしていた。

 山の木のうち良い材は住宅などに使われますが、いわゆる未利用材と言われる悪い材は持ち出すコストが過大になって山に切り捨てになることが多かった。

 群馬県の木材生産量20万㎥のうち1万㎥が上野村の生産量で、このうち半分を市場に出し、残り半分をペレットにしてエネルギーとして使う。ペレットの半分を燃料としての使い、残りを発電で使うということで切り出した木材のすべてを使い切ることが出来るようになりました。燃料だけでは使い切ることが出来なかったのです。

 発電所と言っても180kWの発電機が1基あるだけですが、私たちの木材生産の規模が1万㎥であることを考えると、ちょうどいいのです。仮にこれがうまくいって2基に増やせば、山の仕事が2倍になるのです。10基入れれば山の仕事が10倍になるのです。言い換えれば20人働いていたところが200人の雇用が生まれるという話です。

◆ビニールハウスや家庭用ストーブにもペレット

 ペレットの工場は村の中にあります。ペレットを作るためのオガも作るのですが、シイタケを栽培する際に必要なオガも作ります。ペレットを燃料として使うのは老人福祉施設や、温度の低い温泉施設、宿泊施設のほか農業用のビニールハウスの暖房にもで使ってもらっています。

 家庭用のペレットストーブの普及にも力を入れています。灯油を売っていたガソリンスタンドに影響が及ばないように、ペレットはガソリンスタンドでも売ってもらうようにしています。

 発電設備はドイツのブルクハルト社の製品です。ガス化して発電する方式で、非常にコンパクトで、ほぼ無人で稼働します。チップだとトラブルも多いと聞いていますが、ペレットの場合は非常に管理しやすいと言えます。チップで発電した方が効率的ではないかともいわれていますが、管理という面から考えるとペレットの方が私は効率的だと考えています。 森林がお金を生むことを示すことで、森林の管理も進むのです。

◆「上野村モデル」全国に

 村のお金を外に出さない、エネルギーを地産地消することでそこに仕事が生まれていく、村にお金が留まるのです。上野村の例は現実にそれが出来ていることを示しています。

 身の丈に合った形で進めていきたい。国の補助金も入っています。補助金ありきの中で出来上がった仕組みですが、林業を守る意味でも支援をしっかり考えていただく一方、私たちとしても自前の発電所を持つなどできる限りの努力をしていくことが大事だと思っています。私たちのような取り組みが100カ所、1,000カ所出来たら日本のエネルギーの大きな位置を占めると同時に、地域を守ることに絶対つながると考えています。

 

▽パネルディスカッション

<エネルギーの地産地消とこれからの自治体の姿~バイオマスエネルギーとスマートコミュニティ~

モデレーター:

●藤村コノヱ 様
認定NPO法人環境文明21共同代表、博士(学術)

パネリスト:

●村手 聡 様
総務省地域力創造グループ地域政策課長

●佐々木陽一 様
PHP総研 研究推進部 公共イノベーション課シニアコンサルタント主任研究員

●黒澤八郎 様
群馬県上野村村長

●柏木孝夫 様
東京工業大学特命教授/日本サステイナブルコミュニティ協会代表理事副会長

  • 藤村 日本サステイナブルコミュニティ協会は「エネルギーを基軸に持続可能社会を作る」目的で組織され、活動を始めた団体です。一方、私が所属する認定NPO法人環境文明21は環境を主軸に持続可能社会を作るのが目的です。一般社団法人とNPOと立場は違いますが、持続可能な国や社会を作ろうということでは一致しています。
     それではまず総務省の村手課長とPHP総研の佐々木主任研究員にそれぞれの取り組みについてお話しいただきます。
     そのあと①再生可能エネルギーで本当に地域活性化と持続可能社会が作れるのか②エネルギーで持続可能社会を実現するにはポイントがどこにあるのか③地域共同で進めるにはどういう工夫が必要か――の3つの観点で議論を進めたいと考えています。
  • 村手 総務省地域力創造グループ地域政策課は10年前にできた組織で、人口がどんどん減ることが確実視される中で消滅可能性都市ということもいわれるようになり、地域を元気にする必要が出てきました。
     私たちは地域力を強化するにはまず地域資源を見つめ直し、それを使って雇用を生み出し、消費拡大と経済を活性化することが大事だと考えています。そしてそれを担う地域の人材と組織を育成する支援施策を用意しています。
     これまではエネルギーといえば国が取り組むべきもの、電力会社のネットワークで送られてくるものという意識がありましたが、地域にはエネルギーを生み出す資源がたくさんあるのです。
     総務省には分散型エネルギーインフラプロジェクトの具体的支援策として「地域経済循環創造事業交付金」があります。地方公共団体が核となって地域のバイオマスや廃棄物などの資源を使った地域エネルギー事業を立ち上げる際、そのマスタープラン作りを支援します。
     電気代は日本全体で18兆円にも上るといわれています。その1割を地域で創り出すだけでも1兆8,000億円にもなります。地域の経済循環を高める効果があります。
     また産学金官の連携により地域の資源と資金を活用して雇用吸収力の大きい地域密着型企業を立ち上げる時、それを支援する「ローカル10,000プロジェクト」という施策も「地域経済循環創造交付金」の中で実施しています。今年3月末時点で231自治体・357事業に交付が決定されています。こうした制度を活用して地域創生を図っていただきたい。
  • 佐々木 PHP総研は松下幸之助がパナソニックとともに創った会社です。彼は「企業は社会の公器である」と言っています。企業の活動も天下から与えられた資源を使っている。企業の利益は社会へのお役立ちするためにいただいているものである、と言っています。
     再エネも天下から与えられた地域の資源です。これを地域自立のために役立たせたいという思いで「再エネでローカル経済を活性化させる―地域貢献型再エネ事業のすすめ―」という政策提言を2012、2014、2017年と3回しました。
     私たちの関心は再エネをやったからと言ってそれだけで地域経済がすべて好転するなんて言うことは到底考えていません。しかし何もしなければもっと沈んでいく。再エネをやれば少し好転するかもしれない。地方にとって怖いのは人口減少と、それに伴う経済の縮小です。再エネというのはFIT(固定価格買取制度)を活用すれば少なくとも20年間は現金収入をもたらしてくれる。それが若者にも波及すれば人口減少も緩やかになります。
     これまでの経験から再エネ事業で地域を活性化できるかどうかは、どれだけ多くの人を再エネにかかわるように事業を組み立てられるかどうかにかかっていると思っています。
  • 藤村 持続可能ということを考える時は、若い世代がいるかどうか、健康に生きていける環境があるのかどうか、経済的に成り立つ働き場があるかどうか、暮らしている人々がハッピーに暮らせているのかどうかが持続可能かの判断のポイントになります。高齢化、人口流出、限られた働く場などの問題がある中で、再エネで持続可能な地域が本当に創れるかについて、まず黒澤村長にお聞きしたいです。

◆仕事を生み出す再エネ事業、地域持続へ一歩

  • 黒澤 持続可能かどうかを議論する前に、今日を食べていけるのかどうかという問題が私たちの前にはあります。そういう状況の中で再エネ事業、なかでも木質バイオマス事業は必ず仕事を生み出します。間伐材を山から切り出すことでも仕事は生まれるのです。本当の意味で地域の持続につながるのかという問題もありますが、可能なことを1つずつ積み上げることで結果が出てくる。やれることをまずやることが大事で、それが第一歩なのです。
  • 藤村 上野村は1200人規模でしたが、もっと大きな規模の地域を見てきた佐々木さんは再エネ事業の有効性をどうとらえていますか。
  • 佐々木 規模の大きな自治体になるほど様々な資本家がいて、再エネ事業に参画できる人も出てきます。その点、小さな自治体は資本家に恵まれず事業をやろうとすると自治体が自らやるしかなくなります。
     FITはやり始めたら20年間は確実に一定の収入があるわけで、その効果は無視できません。FITの事業者を見ていると、仮にFIT制度がなくなってもやっていけそうな力を持った事業者が多く、そういう事業者を生み出したところにもこの制度を作った意味があったのではないかとも思っています。
  • 藤村 行政の再エネ事業ですが、環境省、経済産業省など関係のある省庁が縦割りで事業を進めていて、本当に総括的な行政が出来ているのかという疑問があります。
  • 村手 世界ではESG投資(環境・社会・企業統治に配慮した企業を重視・選別して投資すること)が潮流となり、第5次エネルギー基本計画では再エネが主力電源に位置づけられました。その中で再エネは技術革新も必要だし、内外価格差の解消も必要です。
     私たち総務省はこの分散型エネルギーの普及を確実なものとするため、農林水産省、資源エネルギー庁、国土交通省、環境省という関係省庁と連携して自治体等の再エネ事業に対してマスタープランの策定から事業化まで徹底したアドバイスを行う体制をとっています。
  • 藤村 第5次エネルギー基本計画では再エネの比率が2030年で22-24%と第4次基本計画の数字が据え置かれました。一方、欧州は2020年で再エネ比率30%を達成するとしています。世界の潮流から遅れている中でパリ協定(気候変動抑制に関する多国間の核最適な協定)の実現は可能なのかお聞きかせください。
  • 柏木 再生可能エネルギー、バイオマス発電のFIT価格は国際的にも高いですが、仮に買取価格が増えてもいいということであれば再エネの比率を上げることはできます。しかし電力価格は上げないでほしいという産業界のニーズも考えると再生可能エネルギーの比率は22-24%がいいところかと思います。
     原子力と合わせればゼロ・エミッション(環境汚染や気候を混乱させる廃棄物を排出しないエネルギー源)の電源構成は44%を占めます。産廃やごみの活用などを含め分散型エネルギーへの流れがさらに進めば、再エネの比率はもっと上がるかも知れません。
  • 藤村 次に「エネルギーで持続可能社会を実現するにはポイントがどこにあるのか」について、有効な政策、そして住民と自治体の意識改革の進め方についてお話しください。
  • 佐々木 現在、多くの自治体は財政難に陥っています。それがもっと進めば財政再建団体に指定された北海道の夕張市のようになります。そうした時、再エネ事業を担う組織が様々な社会的課題に対して応えていくことになる可能性があります。
     ドイツのシュタットベルケ(エネルギーを中心にした地域公共サービスを担う公的な会社のこと)がその先例です。公益的課題を再エネ事業者が担うのです。その場合、自治体は政策的に支援する必要が出てきます。他の組織と差別して支援することに対して合理的な根拠を持つことが大事になります。

◆官民の連携で地域を再生

  • 藤村 シュタットベルケの話は自治体と民間の役割のあり方、連携のあり方といった問題につながります。
  • 村手 ドイツは石油ショックの時に熱導管の敷設などインフラを整えた歴史を持っています。シュタットベルケのような組織がやるか自治体がやるかはともかく、地域の資源を内部化することが重要です。地域の山には資源が眠っているのです。
     地方自治体が自ら森林整備事業を行い、その費用負担を幅広く住民に求める目的で徴収する税である「森林環境税」の導入が進もうとしています。今こそ再エネ事業に乗り出すチャンスだと考えています。
  • 藤村 自治体には再エネ導入について知識や経験のある人はほとんどいないでしょう。そうした中で再エネ事業を進めていくにはどうしたらいいのでしょうか。
  • 黒澤 今までのエネルギー政策といえば「省エネルギー」で、「地産地消」の言葉は食品に使われる言葉でした。それがエネルギーについても地産地消が盛んに使われるようになりました。上野村の木質バイオマス発電はFITで売電し収入を得るのではなく、村内で自家消費するまさに地産地消型のものです。今まで電気料金として村外に出て行った電気料金が地元に落ちるのはすごいことなのです。
     この村の場合、エネルギーをどうするのかという観点ではなく、林業の活性化をどうするか考えていた中で、木材の出口戦略として木質バイオマス発電に行きつきました。急峻な山から切り出すので、コストは高くなります。政策的な支援が無ければ日本の山村は、資源はあっても切り出せない状況が続くでしょう。
  • 村手 国産木材の需要拡大が大事です。品質のいいA材、B材は市場で回るようにして、C材、D材はエネルギーに使うというシステムを作ることです。また「CLT」と言って板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネルは耐震性に優れるなどで注目されています。
  • 藤村 産業や立地の違いと様々な再生可能エネルギーの最適な選び方についてお聞きかせください。
  • 柏木 再生可能エネルギーで成長力があるのは太陽光発電と風力発電です。地域によって適した再エネは異なりますが、自治体が民間の再エネ事業を応援すると地域の金融機関も安心して融資ができます。再エネの新しい拠点を作ることは地方銀行にとっても新しい貸出先ができるわけで、貸出先に苦しむ地銀の改革にもつながるのではないでしょうか。
  • 藤村 地域共同で進めるための工夫についてご来場の皆さんにお聞きします。こんなことをすると相互に利益が生まれる、自治体も地場産業も元気になる、といったアイデアを教えてください。
  • 参加者A 私の所属する組織ではVPP(バーチャル・パワー・プラント=仮想発電所)という取り組みをしている。もう議論をしている場合ではなく、何かをやる時期に来ています。
  • 参加者B 島根県津和野町から来ました。ガス化発電に取り組んでいたのですが、送電線に今は空きがないと電力会社から言われ、計画が足止めを食らっています。同じような自治体は全国に多いのではないでしょうか。
  • 藤村 まず空き容量の問題について柏木先生のご意見をお聞きします。
  • 柏木 電力会社にとって送電できなくなるといった不測の事態になることが最もおそろしいのです。電力需給は「同時同量」が基本で、需要と供給が一定の幅を超えてかい離すると、大規模停電が発生するからです。このため電力会社では安全を確保して送電できる量を計算しているのです。ただ2020年に発送電分離が行われると、実際の送電量がより正確につかめるようになり状況は少し変わるかもしれません。
  • 藤村 最後にパネリストの皆さんに再エネ事業成功のポイントについて教えてください。
  • 佐々木 以前は再エネといえばメガソーラーでしたが、これからは上野村のように地産地消型の再エネ事業に関心が集まるでしょう。系統連系の問題があるにせよ、官民が連携して事業主体を作ることが成功のカギを握ります。自治体が再エネを生かしてどんな将来ビジョンを描いているのか資本家にも明確にすれば、資金の流れもできてきます。

◆協会に自治体・地域の指導役を期待

  • 村手 地域には再エネをやりたい気持ちはあってもどう進めたらいいのか分からないという課題があります。そうした時、この日本サステイナブルコミュニティ協会などがうまくその地域を指導してあげることがとても重要になると考えています。また電気だけでなく、発電で同時に出てくる熱をもっとうまく利用することを考えていけば、再エネの市場は広がると見ています。
  • 黒澤 村民は再エネの重要性をよく理解してくれています。子供たちにどう伝えるかですが、教育の中で「給食センターは太陽光の電気だけで足りているんだよ」とか、「図書館の本は再エネの電気を売ってできたお金で買ったから『再エネ文庫』という名前にしたんだよ」とか、「スクールバスはバイオマス発電で作った電気を蓄電して走っているんだよ」と言えるような「バイオマス発電の村」に将来的にはしていきたいです。
  • 柏木 本日、総務省の村手課長が使われた資料の中にマスタープランは作ったけど、未だに実現に至っていない自治体がたくさん出ていました。こうした自治体こそ私たちが相談に乗り実現に導くことが大事だと思いました。
  • 藤村 持続可能な地域づくりに取り組んでいる人に成功の条件を聞いたら、①地域全体で目標と情報が共有されている②組織や立場の枠を超えた多くのリーダーがいる③すべての人に当事者意識をもってもらう――という回答でした。本日の様々な提言を生かし、地域から日本を変えていきたいと考えています。