苫小牧バイオマス発電所の運転・管理業務 ~再生可能エネルギー活用による地域貢献~

地域プロジェクト 第9回
苫小牧バイオマス発電所の運転・管理業務 ~再生可能エネルギー活用による地域貢献~

 苫小牧バイオマス発電所は、北海道の玄関口である新千歳空港に隣接する、交通の便が良いところにあります。また、北海道の中では太平洋に面し冬の積雪量が少なく、夏は涼しく快適な地域です。
 三井物産フォーサイト(株)は、地域冷暖房設備O&M(Operation & Maintenance)業務の実績を活かし、2017年2月より苫小牧バイオマス発電(株)からO&M業務を受託しました。

【工事開始から運転開始まで】
 2015年4月に工事計画届書が受理され、翌月の連休明けから工事を開始し、2017年1月には使用前自主検査を実施しました。工事の着工から運転開始まで約1年11ケ月の期間を要しました。三井物産フォーサイトは、建設工事計画時から参画し、運転管理業務の視点から事業主様への積極的な提案・技術供与と共にボイラー・タービン主任技術者及び電気主任技術者の派遣を行い、事業主様と試行錯誤を重ね、2017年4月28日営業運転開始となりました。

 発電所の試運転は2016年11月中旬に火入れを行い、12月~翌年1月にかけて試運転調整となりました。11月下旬には日によっては最低気温が0℃を下回ることもあり、12月~1月に至っては日中もマイナス気温の真冬日になります。この時期に試運転、設備を停止して調整を繰り返し、停止中の凍結対策にも苦労しました。試運転期間中はジェットヒーターをフル稼働させ応急対応しましたが、配管凍結の失敗から①水循環ラインの確保や停止中の常時水循環の実施②圧力・流量計測器の検出導管へのヒーターの設置――等さまざまな対策を行いました。その結果、寒気や万が一の冬季間における発電所停止にも対応できる設備とすることができました。

 昨年の北海道胆振東部地震(2018年9月6日3:08発生/苫小牧市震度5強)による北海道電力系
統全停電の際には、当発電所は北電送電系統との保護遮断により、発電所内自己発電(所内単独運転に移行)で運転継続することができ、設備を破損することなく安全に停止することができました。
 幸いなことに時期的に、寒さや設備凍結の心配はありませんでしたが、冬季に同様な災害・停電が起きた場合の保安に検討すべき課題が残りました。

【発電所の安定運転を目指して】
 発電所を安定稼働させるために、日々の保守や監視をどのように続けているのかについて紹介したいと思います。
 発電所の運転員には、巡回点検、設備保全、燃料受入管理、ユーティリティ(プラントの運転に必要な電気、水、圧縮空気、燃料、起動時助燃用重油等)の調達管理等様々な業務があります。
 その中でウェイトが高いのは、運転状態の監視であり、監視は24時間交代制、運転員は最低でも2人で運転の監視を行っています。普段は、監視モニターを通じて監視を行いますが、毎日1回は巡回点検を行い現場機器の主要な記録も直接取るようにしています。仮に異常があれば簡単なものは点検の上運転員が補修します。また、設備保全が専門のメンバーもいるためそのメンバーが補修することもあります。

 監視は主にモニターに表示されている数字をチェックし対応します。発電所内の燃料供給系統には2か所の水分センサーがあり、大まかな含水率を測定できる仕組みとなっています。木質チップ専焼によるバイオマス発電では燃料チップの含水率が重要であり、適切な含水率であれば安定した運転が可能です。チップの含水率が高い場合には、燃焼空気量を変えたり、木質チップのブレンド(含水率の違うチップを混ぜ合わせる)方法を変えて対処しています。
 発電所が稼働して最初の頃はトラブルもありましたが、チップの含水率が高すぎて「不完全燃焼」の状態となりボイラーが失火しそうになったこともあります。その時はセンサー値で含水率75~80%となりましたが、乾燥したチップを投入し無事に原状復帰しました。前述のようにチップの含水率は常にチェックが必要であり、丸太から燃料チップを作る製造担当者と連携し連絡を取り合ってチップの含水率をできる限り下げるよう調整しています。

【地域への貢献】
 このバイオマス発電を通じて地元の方々の雇用が生まれています。バイオマス発電は、再生可能エネルギーを使用した発電(太陽光、風力、地熱等)の中でも多くの雇用、特に地元地域の方の雇用を生み出す効果が大きいと考えています。発電所で働くメンバーは、三井物産フォーサイトの他協力会社を含め約25名が勤務しています。また、1日当たり15~20台の丸太を輸送するトラックドライバーの方の仕事も生み出しています。
 更に、地元林業に従事する方々への貢献もあります。燃料となる木材を伐採、集荷して搬送していますので、その仕事も新たに生み出しています。しかもこれらの木材は今まで利用価値の低かった未利用材をメインにしていることが重要なポイントです。
 バイオマス発電は、発電所の直接的な業務だけではなく林業や運送にも関わり、しかも雇用の確保や仕事量を増やす効果もある幅広い事業と言えます。

【地産地消の再生可能エネルギー発電所】
 2018年末時点で北海道内のバイオマス発電で5件稼働しておりますが、北海道の木材だけで発電しているのは苫小牧バイオマス発電所が最初となります。また、発電所は北海道の木材だけで発電していることもあり、地元苫小牧の方々からも注目されています。

◆苫小牧バイオマス発電所のご紹介◆
・発電所の名称:  苫小牧バイオマス発電所
・所在地:     北海道苫小牧市晴見町40番地4
・発電事業者の名称:苫小牧バイオマス発電株式会社
・発電容量:    6,194kW
・年間発電量:   約402万kWh(一般家庭約13,000世帯分の年間使用電力に相当)
・営業運転開始:  2017年4月28日
・発電電力の売電先:北海道ガスへ電力を販売
・運転、管理員:  13名(日勤5名 交代勤務8名)
・運転監視業務:  24時間365日 2名×4班体制
・主要機器:    ボイラー、タービン、発電機、木質チップ供給装置他
・特徴:      三井物産、北海道ガス、住友林業、イワクラの4社出資
          年間約72,000トンの間伐材由来の木質チップを使用
          (木質チップは全て国産品で苫小牧を中心に150km圏内から供給)

(三井物産フォーサイト株式会社 エネルギーマネジメント事業本部 執行役員本部長 栗原邦芳)