アミタ株式会社

地域プロジェクト 第2回
「住民主体でバイオマス産業都市構想の具現化を目指す 森 里 海 ひと いのち めぐるまち 南三陸」

  南三陸町は、人口約1万3千人の宮城県北部沿岸部に位置します。
 同町は将来像として「森 里 海 ひと いのちめぐるまち 南三陸」をかかげており、地域の未活用資源を地域内循環させる都市構想を策定。2014年に農水省からバイオマス産業都市に選定されました。
 詳細:http://www.aise.jp/case/vision/minamisanriku.html?jsca7

●持続可能な未来を育む拠点「南三陸BIO」
 その構想の中心に位置づけられているのが、2015年10月に竣工した、バイオガスプラント「南三陸BIO(ビオ)」です。町内の生ごみやし尿処理汚泥等を収集してメタン発酵させ、電気と液体肥料(液肥)を生成します。液肥は町内の農業や家庭菜園等で活用されます。

 これにより、近隣市で焼却処理していた生ごみの資源化と域内循環が可能になり、また地域の環境教育の場としても活用されています。開設1年で来訪者は1,000人を超え、今では地元団体による視察ツアーのメインコンテンツとしても活用されています。
 詳細:http://www.aise.jp/case/circulation/minamisanriku_bio.html?jsca7

●BIOの本質は「関係性を育むインフラ」
 このバイオガス施設は、住民の方々の生ごみ分別が必要不可欠です。地元有志の方々が普及啓発に協力してくれ、キャラクターや紙芝居、新聞などが生まれました。その甲斐もあって、異物混入率は1%前後と大変低くなり、バイオガス施設の安定操業につながっています。

 保育所や小学校での普及活動は児童にも浸透しており、園長先生によると「漁師の子が多いので、さかなの骨はどっち? とか、ホタテのからはどっち?と、給食に出ないものの分別方法を保育所で先生に尋ねてくるんですよ。」

 「おうちでも台所のお母さんにへばりついて、ニンジンのへたを拾い上げて『お母さん、違うのに入れた』と訴えたりするそうです。子供に言われるとお母さんも面倒くさいって言えなくなるんですよ。」とのこと。

 町内にはプラントから生み出される液体肥料のタンクが設置され、町民の方が活用しています。町内の民宿では、この液肥から作ったお米や野菜を提供することで、食の循環を作り上げているところもあります。これらの取り組みで同町の沿岸部と山村部は、今まで以上に交流が密になった事例もあります。

 液肥を活用してくれている農家さんは、「自分たちが食べているもので作った液肥なので、体にも環境にもいい。自然の状態でてきた肥料を使い、全くの無駄を産まず、永遠にめぐる、そういう作物を作ること、ストーリーが素晴らしく、生ごみからできた『おらが野菜』をみなが食べることが広まってほしい」とおっしゃっています。

 生ごみ、肥料、食料という循環が、「いのちめぐるまち」を可視化し、住民の協力が不可欠なプラントの運営が、住民の主体性とまちづくりへの積極参加を促しています。
 詳細:http://www.aise.jp/voices/circulation/?jsca7

●液肥散布を地元の収集運搬会社が新規ビジネスと捉えて参入
 BIOの運営で液肥散布を効率的・効果的に行うことは、施設運営の重要な点です。この役割を地元の収集運搬会社、山藤運輸が引き受けました。
 同社は、町内の可燃ごみを気仙沼市焼却場へ運ぶ仕事を請け負っていました。生ごみが町内で資源循環されると、同社の可燃ごみ運搬の9仕事は減ります。

 しかし、同社代表は「ごみ運搬の仕事は減るだろうけど、新たに液肥を地域内で運んで撒く仕事ができます。変化に対応するのが経営です。」と、新たに液肥散布車を自社投資で購入。前述のキャラクターをラッピングし、町内に「いのちめぐるまち」を伝えながら液肥を散布しています。

 小学校の食育教育の現場でも、このデモカー散布車は大活躍。散布作業担当のスタッフは戦隊ヒーローにイメージを重ねた「散布マン」を自称して資源循環事業のPRに務めています。子どもや農家からの感謝を感じつつ働けることは、求人の際にも有効で、ドライバー不足の解消にもつながっています。

 これらの活動をきっかけに、同社は町内の若手リーダーたちと共に資源循環を担う新たな合同会社MMRを設立し、域内の森林で未活用となっている木質バイオマスをペレット燃料に加工する事業も視野に入れています。
 詳細:http://www.aise.jp/voices/circulation/00013.html?jsca7

●生ごみ分別から始まった住民主体のまちづくり
 分別という共同作業で、コミュニティ力が強化された同町は、町内の団体がそれぞれFSCR森林認証、ASC養殖場認証を取得。この山と海の二つの国際認証を取得した団体が両方存在する自治体は、日本初、世界でも非常に稀な事例であり、大きな注目を集めています。
 詳細:http://www.aise.jp/case/branding/certification.html?jsca7

 同町は現在、南三陸の沿岸をラムサール条約登録に向けて動いており、その他にも、生ごみ以外の資源化に向けた実証実験など、様々な取り組みでバイオマス産業都市構想の実現を目指しています。

●参考情報 南三陸の事例を基に、持続可能な地域をどのように作るかを描いた無料電子書籍『バケツ一杯からの革命』
http://www.amita-hd.co.jp/books/?jsca7#e-book04

南三陸のまちづくりをまとめた動画「いのちめぐる」
https://www.youtube.com/watch?v=rCxGd-nyZz0