製材端材で熱プロジェクト

地域プロジェクト 第17回
トーセン・
那珂川バイオマス、製材端材で熱プロジェクト
マンゴー栽培やウナギ養殖など新事業

 私たち株式会社森のエネルギー研究所では、木質バイオマスエネルギー利用の実現に向けて全国各地で大小のプロジェクトに携わりクライアントのベストパートナーとして全力で応援しております。本日は、2013年度から2015年度にかけて弊社が支援した製材事業者である株式会社トーセン様(以下、トーセン)、また関連企業である株式会社那珂川バイオマス様(以下、那珂川バイオマス)が実現した、熱利用プロジェクトについてお話をしたいと思います。
事業のきっかけ 
 トーセンは、栃木県に本社を置く国内でも最大級の国産材専門の製材会社です。こちらでは事業拡大に合わせ、那珂川町の廃校となった学校跡地に製材工場を新設しましたが、そこで発生する製材の端材の処理に悩んでいました。通常は、製紙会社へパルプ用の原料として販売しますが、それ以外の販路を作り木材に多様な価値をつけたいというのがトーセンの思いでした。
 そのなかで生まれたアイディアが、那珂川町内の建材製造工場に使われる加熱用の蒸気を製材端材から作り出せないか、というものでした。さらに、田畑が広がる那珂川町では、「マンゴーのハウス栽培に使いたい」「野菜も育てたい」「いや、ウナギの養殖なら有効に熱が使える」と話が広がり、木質バイオマスを用いた加熱用の蒸気利用と農業ハウス・ウナギ養殖の温水利用と木質バイオマスエネルギーを多段階熱利用する事業を計画しました。これは、2013年の林野庁が実施したモデル事業(※参照)へ応募し、無事採択を受けてプロジェクトが開始しました。
※「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」

製材の端材

マンゴーのハウス栽培

那珂川地域でのモデル事業
 本プロジェクトでは、町内にある住友金属鉱山シポレックス株式会社(以下、シポレックス)での建材製造で使用する加熱用の蒸気と隣接して整備する農業ハウスで暖房用に使用する温水を那珂川バイオマスが所有する木質バイオマスボイラーから供給・エネルギー販売をすることを軸に、「林地残材の現地破砕・一貫型施業による効率化」「温水での農業・養殖への活用」「これらの熱エネルギー販売事業のモデル構築」を行いました。
 弊社は、このプロジェクトの裏方として、試験と導入計画の策定、事業モデルの検証などを行い、蒸気量毎時6t/hの木質バイオマスボイラーの稼働と熱利用の実現に貢献しました。シポレックス側ではおよそ20%以上のA重油削減とCO2を年間6,000t削減することができました。また、併設したハウスではマンゴーやナスなどの農作物も順調に育ち、今では地元の方たちが「那珂川町地域資源活用協同組合」という組合を立ち上げ、町内の再生可能エネルギーや地元産の野菜・養殖魚を観光資源に活用する取り組みも始まっています。

 これからも私たちのサポートを必要とする地域の皆様のため、日々学び、発信を続けていきたいと思います。

(株式会社森のエネルギー研究所 実践コンサルティング部副部長
兼エンジニアリング課課長 小川聡志)