地域が自立化・自走化のために“何”が出来るか

地方創生コラム 第9回
地域が自立化・自走化のために“何”が出来るか

 【1,788-896=892】
 この数字を見てピンときた方もいるかも知れない。2014年に国土交通省が発表した「国土のグランドデザイン2050」によると、2050年までに現在の居住地域の6割以上で人口が半減し、うち2割以上が無居住化するという。
 同じく2014年に日本創成会議がまとめた、通称「増田レポート」によれば消滅可能性都市が2010年対比2050年までに約半数となる896の自治体が実際に消滅してもおかしくない危機にあるとしています。現在の自治体数1,788から差し引くと実際に残る自治体数は実に892となる計算です。
 そうなれば、従来当たり前であった行政サービスが無くなることと同時に、民間のサービス(例えば、病院や銀行、飲食店など)も大幅に減少することも現実に考えなければなりません。
 日本全体が少子高齢化の流れになっていることは事実であり、避けて通れない状況であるが、だからと言って、自分たちの自治体(居住地域)が消滅しても仕方ないと諦めている方々は少ないでしょう。
 とはいえ、具体的に明日から何をしようとかと思いつき、動ける経営資源(ヒト・モノ・カネ)も限られているのが現状ではないでしょうか。

 話は変わるが、読者の皆様は日本より18年も早く電力自由化を成し遂げた国としてドイツの話を耳にされた方も多くいらっしゃるでしょう。
 自由化直後に8大電力会社が存在していたが、現在はE.ONやRWEなど4社に集約されています。大手電力会社に対抗して俄然脚光を浴びてきたサービスとして「シュタットベルケ」というものがあり、自治体が出資しながらも市からは独立した経営体制の中、電力、ガス、熱供給、水道、公共交通、通信などのサービスを住民向けに提供します。
 シュタットベルケの評価の源泉は「地域内資金循環」による地域貢献にある。シュタットベルケ・デュイスブルクの事例を見ると、電力販売1ユーロ当りの地域還元額は大手電力会社が約11セント(約10%の地域循環)に対して約29セント(約30%の地域循環)となっており、生み出す地域雇用も直接雇用で1709人、間接雇用で1390人、誘発雇用で2494人となっています。(いずれの数値もデュイスブルグHPから引用)
 一方で日本国内では、自治体が出資し市から独立したサービスとして近年「地域新電力(自治体新電力)」という仕組みが増えてきています。設立が早い所で言うと「中之条パワー」や「みやまスマートエナジー」が有名で、自治体の人口規模で言えば政令市である「浜松新電力」や「北九州パワー」があります。当社は浜松新電力を含め数か所の地域新電力に対して運営支援を行っています。

 実際の運営に携わった経験で言えば、自治体が関わる新電力が成功するポイントはいくつかあると思われます。一つ目は、首長と自治体職員の積極的な関わりです。どちらか一方が欠けていると上手くいかないケースが多いと感じられます。また地域企業や地域金融機関の積極的な関わりも重要な要素と考えます。この辺りの地域の主役たちが中心となって進めることが非常に大事であると考えています。
 二つ目は、電源の確保です。一般的に新電力事業の成功はこの電源を如何に安定的に廉価で調達できるかで決まると言っても過言ではありません。仮に市場調達(JEPX)をメインにすると価格高騰リスクを回避できません。相対電源を確保すると言っても容易に出来ることではありません。少し時間を要しますが、地域の資源を活用した地産電源の確保が継続的な事業運営に重要な要素となると考えています。地域の資源を活用するということは、地域の方々が永続的に地域に関与する、即ち経済循環に寄与すると考えられ地域の自立化に貢献するものではないでしょうか。地域で作られた地域のエネルギーを地域で消費する。この目的を叶える手段として、最初の一歩として地域新電力の設立を検討してみてはいかがでしょうか。

(NECキャピタルソリューション株式会社 環境・エネルギー推進部長 黒澤勝)