第2回 竹林征雄

地方創生コラム 第2回
「エネルギー・化学素材に広がる森林資源の可能性」

 日本の森林は宝の持ち腐れかもしれない。
 全国の森林面積は2,500万haで、国土森林率68%、蓄積量55億m3、そして年間成長量1.5億m3と先進諸国では群を抜いている。しかし、その素材供給量はわずか2,000万m3にとどまる。
 欧州の林業大国ドイツの製材品輸出は世界第3位、その森林面積は約1,500万ha、森林率33%、蓄積量35億m3、成長量0.95億m3と日本と比べざっと3割ほど少ないのにかかわらず、素材供給は8,000万m3と日本の4倍もある。  
 ここで、木材関連総生産の話へ移そう。2008年農林中金総合研究所レポートでは、ドイツ林業・木材クラスター総生産は30兆円、雇用130万人、熊崎実先生の近著では2016年総生産は23兆円、雇用108万人と出ている。
 ドイツの国内総生産(GDP)は380兆円だから、23兆円はGDP比率で6%である。残念ながら、日本のそれは見当たらない。2016年の日本のGDPは540兆円だから、ざっと見積もって森林・木材クラスターは32兆円、関連雇用114万人ほどではないだろうか。日本の場合、国内材の供給は4分の1でドイツよりはるかに低いのが実情と推測される。
 つまり、日本には資源がないと言いながら、実は森林大国、膨大な有機資源大国であるにも拘らず、森林を科学的、工学的にも、産業化の視点も持ち合わせていないことは残念と言わざるを得ない。

 木材から建築・家具材、パルプなど以外に、近い将来、生分解プラスチックをはじめ、炭素繊維やカーボンナノファイバーなどは一大産業に育つ可能性を秘めている。今後はコスト課題を克服し水素やエタノール、医療・農薬、洗剤などが生産される時代が来るだろう。 忘れてはならないのは、その手前に、木材のバリューチェーン(価値連鎖)の一環として、木材資源のエネルギー化という過程がある。
 単なる薪炭利用から、チップやペレットでのボイラー利用、そして世界は今、小規模分散自律型の木質バイオマスガス化熱電併給の活用時代を迎えている。太陽や風力エネルギーの活用と併せ、AI・IoTを自在に利用した「賢い自立まちづくり」が世界では広がり始めている。  
 SDGs(持続可能な開発目標)の中でも、「目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)+目標13(気候変動に具体的な対策を)」は世界を支える大目標。目標達成には、バイオマスの活用は必須で、それなくして、今回の中四国を襲った気候変動による大災害は避けて通れない。脱炭素社会は待ったなしだ。

(日本サステイナブルコミュニティ協会 顧問 竹林 征雄)