養父市の挑戦 ~国家戦略特区活用し規制緩和で農業活性化~

地方創生コラム 第13回
養父市の挑戦 ~国家戦略特区活用し規制緩和で農業活性化~

養父市長  広瀬 栄

 農業、農村は、私たちが生きていくために必要な食糧の生産の場としての役割だけでなく、地域の伝統文化を育み、多様な生き物を育て、また、美しい田園風景は心を和ませてくれるなど、私たちの生活に様々な恵みをもたらしています。
 しかし、残念ながら、人口減少に伴う農業の担い手不足などから、中山間地域の農地の荒廃は近年加速度的に進んでいるのが実情です。
 農地や農村を未来に継承するためには、従来の施策をただ漫然と取り組んでいても不可能であると考え、本市では、平成26年5月、国家戦略特区の指定を受け、規制緩和による農業の活性化に取り組んできました。

 農地の流動化を促進し、かつ迅速に処理するため農地の権利移動に係る許可権限を農業委員会から市長に移管し、次に農業生産法人の役員要件を緩和し、企業の農業参入のハードルを下げたことにより、13社が特区事業者として本市で営農を開始しました。
 これら特区事業者の一つでもある(株)トーヨー養父農業生産法人のグループ会社が、本年3月にメタン発酵発電施設を整備しました。市内の畜産農家の家畜ふん尿や食品加工会社の食品残渣等をメタン発酵させてバイオガスを取り出し、それを燃料として発電を行うもので、クリーンエネルギーの供給のみならず、発電後に生成される消化液の有機質肥料としての有効活用、CО2削減による環境の保全、雇用の創出、地域経済の活性化、地域循環型社会の構築、SDGsの実現など多方面に寄与することが期待されています。

 今後、地方が自立し持続可能なまちづくりを行うためには、食糧の自立、エネルギーの自立、社会と心の自立の3つが必要であると考えており、当該施設は、地方創生を進める上で非常に大きな意味を持つものと考えています。
 全国的な人口減少が進む中、心のふるさとである農業・農村を守るとともに、そこに住む人々が心豊かに暮らせる幸せ社会を目指し、本市がそのモデルを構築するという強い決意と不退転の覚悟を持って挑戦し続けていきます。