FIT後のバイオマス活用と地域事業創出を考える

地方創生コラム 第11回
FIT後のバイオマス活用と地域事業創出を考える

 人類が気候に与えた影響の結果として地球が自発的に冷却化する機会を人類が越えてしまったとする研究結果がある。世界的な高温、大型台風や豪雨、海陸の氷融解等が頻発し、誰もが温暖化を実感しているのではないか。これ以上の温暖化を防ぐには、今世紀半ばまでに化石燃料を使うのを止めるだけでなく、木を植え、森林を守り、太陽光をさえぎって大気中から炭素を取り除く機械を開発する等々の労力を割いていく必要があるというのも頷ける。

 先頃の民間財団の推計では、全電源に占める再生可能エネルギーの比率が前年の16.4%から17.4%に増加とあった。再エネ導入によりGHG(温室効果ガス)排出削減をめざしたFIT(固定価格買取制度)は大きな効果を上げたが、急拵えで制度を作ったこともあり、2020年のFIT見直しがとても重要な意味を持つ。
 カーボンニュートラルと言われるバイオマスは、2030年エネルギーミックスで実力以上の期待を負った。政府がFIT見直しの議論を始めたいま、主要な地産地消・分散型エネルギー源としてのバイオマスは、FITに頼らない事業展開が求められている。
 地域に豊富にあるバイオマス(木質、植物、糞尿、下水汚泥等)は、太陽光、風力など他の自然エネルギーと組合せることで、化石燃料の代替となり得る。また、バイオマスは熱を利用してこそ価値がある。CO2削減には、電気をつくる過程のCO2発生を抑える必要もある。燃料輸送の段階でもCO2は大量に発生する。地域の資源を使えば燃料輸送の必要はない。地産地消により、輸送が不得意な熱の弱点を克服することができる。

 国産材の奪い合いと輸入燃料バブルで注目を浴びたバイオマス発電だが、今年の4月から施行された森林管理経営法と森林環境譲与税により、国産の木質燃料の増加が期待できるようになった。
 日本の森林は、環境先進国といわれるドイツの2倍以上の面積があり、年間の成長量は約8千万m3となっている。しかし成長量の6割以上が利用されていないのが現状だ(木材生産量は独の半分以下)。木材で中高層ビルを建て、バイオプラスチックやセルロースナノファイバーが工業原料となり、エネルギー源もバイオマスとなれば、成長量いっぱいを使うようになり資源循環が実現する。

 今年度から実施される森林環境譲与税は、地域の宝である森林資源について考える良い機会となっている。各市町村への配布額は大きくなくても、地域の住民・企業・行政が協力し、国任せ、他人任せを止め、協働して取組むチャンスとなる。都市の住民も協力できる仕組みとなっている。
 地域の人々は自分たちの宝ものの存在にとっくに気付いている。日本サステイナブルコミュニティ協会(JSC-A)の活動を通じて、新税を財源に未利用資源の活用を考えている地域がたくさん存在することがわかってきた。JSC-Aはそんな地域の人々を応援するために設立された。
 地域の林業・木材産業が活性化し、域外から化石燃料を購入していた分が新たな地域事業創出の資金にまわれば、地域資源を活かしたエネルギー事業や温暖化を防ぐ事業など脱温暖化ビジネスを始める人々が更に増えると期待している。バイオマスを活用した地域事業は、FIT後も有望と思える。
 JSC-Aは、地域の人々と一緒に考え、一緒に行動したいと思っている。どんなことでも良いので、気軽に連絡してほしい。
 E-mail:contact@jsc-a.or.jp  TEL:03-6861-7817

(一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会 事務局長 杉浦英世)