心の絆を創る町

地方創生コラム 第16回
「心の絆を創る町」

「この世に無駄なものはない」

このフレーズが、我々アミタグループ社員に脈々と息づく企業精神である。取り扱う商品が地金などの地下鉱物(マテリアル)からSDGs(持続可能な開発目標の達成)に資するソリューション提供に変わっただけで、その根底は全く変わっていない。我々の精神は形を変え、価値の交換を絶えず繰り返しながら、世界中をめぐり続けることが可能である。

▽古いモノや先人の知恵を生かした新しい未来の町づくり
 私自身も高度経済成長の時代の中で、新しいモノを大量に作り、壊しては捨て去ることが美徳であり、古いモノは壊され忘れ去られていくものであると、洗脳されて育ってきたように思う。それが今、持続可能な社会を創るために、古いモノや先人の知恵を生かした新しい未来の町づくりが日本各地で始まっている。それはノスタルジックな回顧主義ではなく、人が自然と共生しつつ、人と人との関係性をゆるやかに構築する未来の新しい町づくりに他ならない。

▽震災も一筋の明かりが人を勇気づける
 本来、人とは他人と近すぎると窮屈に思え、遠すぎると寂しく思う身勝手な生き物である。人の心は移ろいやすく、また儚いものである。私はこのように不安定で泡沫な絆を、安定的に結び続けるひとつの方法が、エネルギーではないかと思う。2011311日の大震災の日も、多くの人々が暖を求めて肩を寄せ合い励まし合った。電気もガスも水も食料もない太古の昔に戻ったような闇夜の世界に、せめてひと筋の明かりを灯すことができたなら!
 きっと多くの方々が勇気づけられたことと思う。
 この心が渇くような切なる思いから始まった取り組みが、宮城県南三陸町での有機ごみを原料にしたバイオガス発電事業のトライアルである。地域住民の方々の協力により分別された生ごみが、ガスや電気を作ってくれる町づくり。今では毎日バケツを持ち合う仲間と、近くて遠い関係性が安定的に適度な距離で保てる町となっている。

▽この世に無駄なものはない。ゴミも人の心しだいでエネルギーになる
 つい先日も南三陸町を訪れた際、この光景を目にして改めて思ったことがある。
 「この世に無駄なものはない。モノは人が価値を見限った瞬間にごみになる。人の心しだいでエネルギーにもなる」
 この取り組みを柔和な笑顔で見守る先人たちもまた、地域の大事な資源である。

 
【注】写真は「生ごみからエネルギーと液体肥料を生み出すバイオガス施設『南三陸BIO(ビオ)』」と、「2018年10月に実施した資源ごみの分別促進と関係性の深化を実証した『MEGURU STATION(めぐるステーション)』」。

                          (アミタホールディングス株式会社取締役 唐鎌 真一)