2018年5月25日

シンポジウム・講演会 5月15日総会記念講演会を開催しました

「実現可能なサステイナブルコミュニティ」をテーマに基調講演とパネルディスカッション
実例元に「エネルギーの地産地消を活かしたまちづくり」を提案

 一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会(JSC-A=代表理事会長増田寛也・東京大学大学院客員教授)は、5月15日(火)午後、東京都千代田区の中央大学駿河台記念館で総会記念講演会を開催しました。テーマは「実現可能なサステイナブルコミュニティ~地方創生の基軸はエネルギーから~」。今年2月28日設立記念シンポジウムのあとの最初の講演会であり、自治体関係者、報道関係者、協会関係者を含め130人が参加しました。

 第1部の基調講演では、柏木孝夫・JSC-A代表理事副会長が日本のエネルギー戦略について、黒澤八郎・群馬県上野村村長が村内に作った小さな発電所が雇用を生み地域持続に一歩踏み出した事例などについて、お話しされました。

 第2部のパネルディスカッションでは、「エネルギーの地産地消とこれからの自治体の姿~バイオマスエネルギーとスマートコミュニティ」をテーマに討論が行われ、パネリストから再生可能エネルギーを活用した地方創生の提案がありました。

 記念講演会のはじめに、唐鎌真一副代表理事(アミタホールディングス取締役 最高戦略責任者)から開会挨拶がありました。

↓第1部 基調講演 ↓第2部 パネルディスカッション

講演会開会挨拶

<唐鎌真一・副代表理事(アミタホールディングス取締役)>

◆自治体と企業ニーズ、出会いの場を創出

 再生可能エネルギーを事業化する場合、これまでは自治体内の再生可能エネルギーを有効利用したいと望む自治体の担当者と、お手伝いしましょうという企業のニーズがたまたま出会って、初めて実現に向かいました。

 しかし、偶然ではなく必然的に出会える機会を作ることが大事だと考えています。ちゃんとした組織を作り、海外等の先進的事例を学べる機会を皆様に提供する。そして地域内の生ごみや間伐材といった資源を使ってエネルギーに転換できないか、という相談に私たちが持つ様々な技術でお役に立ちたいと考えています。

 本日の講演会、パネルディスカッションを通して何らかの「気づき」を得ていただければ幸いです。

基調講演①

<柏木孝夫・代表理事副会長(東京工業大学特命教授)>
「最新の日本エネルギー戦略~これが2050年のグランドデザイン~」

 第5次エネルギー基本計画についてお話します。第1章は「構造的課題と情勢変化、政策に時間軸」、第2章は「2030年に向けた基本的な方針と政策対応」ですが、ここに手を付けると諸外国に新たな国際公約を迫られることになるので、2030年を目標とした数値については4年前に作った第4次エネルギー基本計画の考え方を受け継ぎました。達成されていないものがあれば、進捗度合いを調査して達成するための政策評価を行います。

◆再生可能エネルギーを主力電源化

 第5次基本計画が第4次と比べ大きく変化した点は、これまで親に手を引かれる子供のように、脇役だった太陽光発電などの再生可能エネルギーが、天然ガス、原子力などと並ぶ主力電源に位置付けられたことです。これは本当に大きな変化なのです。主力電源化すると言っている以上、それなりに技術開発も行わなければなりません。
 大臣の勉強会という形で、エネルギーの専門家以外の人も入れて立ち上げた「エネルギー情勢懇談会」が、4月中旬に日本の成長戦略ビジョンをまとめました。2030-2050年を見据えたものです。

◆再エネ価格を国際水準に、経済的自立促す

 今回の第5次基本計画の中にはそのビジョンの考え方も反映されています。第3章は「2050年に向けたエネルギー転換への挑戦」と題して「野心的な複線シナリオの採用~あらゆる選択肢の可能性を追求~」を唱えています。

基調講演②

<黒澤八郎・群馬県上野村村長>

「挑戦と自立の村」の森林・バイオマスを100%使いきる創生戦略

 上野村は群馬県の南西の端にあります。面積は181です。その面積の95%以上が森林で、村内には関東一の清流「神流川(かんながわ)」が流れています。人口は1,207人、世帯数は596世帯(ともに2018年5月1日現在)です。

◆雇用の場づくりがIターン者呼び込む

 昭和30年代には最大5,000人の人口を擁し、蒟蒻(こんにゃく)生産など農林業も盛んでしたが、高度経済成長期以降、過疎化が進みました。
 しかし人口減少の流れを見ると、最近は一時期に比べ減少の速度がだいぶ緩やかになってきました。その背景には、雇用を創出しながらIターン者の受け入れを積極的に進めていることがあります。現在の村の人口1,207人に対し、実に2割に当たる244人がIターン者を中心にした移住者なのです。

◆国有林の木材も活用

 資源の再発見事業として、間伐材の搬出促進、広葉樹の活用、製材所の整備を行い、木質ペレット工場と木材加工施設を作りました。さらにこのペレットを使ったバイオマス発電とバイオマスボイラーを設置・稼働させ、エネルギーの地産地消を実現しました。
 村内の森林は民有林が57%で国有林が43%です。国有林側と協定を結び、村の事業、そしてエネルギー資源として木材を供給してもらうことにしました。

◆ビニールハウスや家庭用ストーブにもペレット

 ペレットの工場は村の中にあります。ペレットを作るためのオガも作るのですが、シイタケを栽培する際に必要なオガも作ります。ペレットを燃料として使うのは老人福祉施設や、源泉の温度が低い温泉施設、宿泊施設、農業用ビニールハウスの暖房にも使ってもらっています。家庭用のペレットストーブの普及にも力を入れています。

◆「上野村モデル」全国に

 発電設備はドイツのブルクハルト社の製品です。ガス化して発電する方式で、非常にコンパクトで、ほぼ無人で稼働します。チップだとトラブルも多いと聞いていますが、ペレットの場合は非常に管理しやすいと言えます。
 エネルギーを地産地消することでそこに仕事が生まれ、村にお金が留まるのです。こうした取り組みが全国に100カ所、1,000カ所出来たら、日本のエネルギーの構造は大きく変わると同時に、過疎などで苦しむ地域を守ることにもつながると考えています。

▽パネルディスカッション

<エネルギーの地産地消とこれからの自治体の姿~バイオマスエネルギーとスマートコミュニティ~

モデレーター:

●藤村コノヱ 様
認定NPO法人環境文明21共同代表、博士(学術)

パネリスト:

●村手 聡 様
総務省地域力創造グループ地域政策課長

●佐々木陽一 様
PHP総研 研究推進部 公共イノベーション課シニアコンサルタント主任研究員

●黒澤八郎 様
群馬県上野村村長

●柏木孝夫 様
東京工業大学特命教授/日本サステイナブルコミュニティ協会代表理事副会長

 
  • 藤村最初に総務省の村手聡・地域政策課長とPHP総研の佐々木陽一・シニアコンサルタント主任研究員にそれぞれの取り組みについてお話しいただきます。 そのあと①再生可能エネルギーで本当に地域活性化と持続可能社会が作れるのか②エネルギーで持続可能社会を実現するにはポイントがどこにあるのか③地域共同で進めるにはどういう工夫が必要か――という3つの観点で議論を進めたいと考えています。
  • 村手私たちは地域力を強化するにはまず地域資源を見つめ直し、それを使って雇用を生み出し、消費拡大を通して経済を活性化することが大事だと考えています。ですからそれを担う地域の人材と組織を育成する支援施策を用意しています。 電気代は日本全体で18兆円にも上るといわれています。その1割を地域で創り出すだけでも1兆8,000億円にもなります。地域の経済循環を高める効果があります。
  • 佐々木PHP総研は「再エネでローカル経済を活性化させる―地域貢献型再エネ事業のすすめ―」という政策提言を2012、2014、2017年と3回しています。 再エネというのはFIT(固定価格買取制度)を活用すれば少なくとも20年間は現金収入をもたらしてくれるのです。それが雇用にも波及すれば人口減少も緩やかになります。
  • 藤村高齢化、人口流出、限られた働く場などの問題がある中で、再エネで持続可能な地域が本当に創れるのかについて、まず黒澤村長にお聞きしたいです。

◆仕事を生み出す再エネ事業、地域持続へ一歩

  • 黒澤持続可能かどうかを議論する前に、今日を食べていけるのかどうかという問題が私たちの前にはあります。そういう状況の中で再エネ事業、なかでも木質バイオマス事業は必ず仕事を生み出します。間伐材を山から切り出すことでも仕事は生まれるのです。本当の意味で地域の持続につながるのかという問題もありますが、可能なことを1つずつ積み上げることで結果が出てくる。やれることをまずやることが大事で、それが第一歩なのです。
  • 藤村第5次エネルギー基本計画では再エネの比率が2030年で22-24%と第4次基本計画の数字が据え置かれました。一方、欧州は2020年で再エネ比率30%を達成するとしています。
  • 柏木我が国の再生可能エネルギー、バイオマス発電のFIT価格は国際的にも高いのですが、仮に買取価格が上がってもいいということであれば再エネの比率を増やすことはできます。しかし電力価格は上げないでほしいという産業界のニーズも考えると再生可能エネルギーの比率は22-24%がいいところかと思います。
  • 藤村次にエネルギーで持続可能社会を実現するにはポイントがどこにあるのか――について、有効な政策と住民と自治体の意識改革の進め方についてお話しください。
  • 佐々木現在、多くの自治体は財政難に陥っています。それがもっと進めば財政再建団体に指定された北海道の夕張市のようになります。そうした時、再エネ事業を担う組織が様々な社会的課題に対しても応えていくことになる可能性があります。ドイツのシュタットベルケ(エネルギーを中心にした地域公共サービスを担う公的な会社)がその例です。
  • 藤村自治体には再エネ導入について知識や経験のある人はほとんどいないでしょう。そうした中で再エネ事業を進めていくにはどうしたらいいのでしょうか。
  • 黒澤上野村の木質バイオマス発電はFITで売電し収入を得るのではなく、村内で自家消費するまさに地産地消型のものです。今まで電気料金として村外に流出していた電気料金が地元に落ちるのはすごいことなのです。

◆協会に自治体・地域の指導役を期待

  • 藤村最後にパネリストの皆さんに再エネ事業のポイントについて教えてください。
  • 佐々木以前は再エネといえばメガソーラーでしたが、これからは上野村のように地産地消型の再エネ事業に関心が集まるでしょう。系統連系の問題があるにせよ、官民が連携して事業主体を作ることが成功のカギを握ります。
  • 村手地域には再エネをやりたい気持ちはあってもどう進めたらいいのか分からないという課題があります。そうした時、この日本サステイナブルコミュニティ協会などがうまくその地域を指導してあげることがとても重要になります。
  • 黒澤村民は再エネの重要性をよく理解してくれています。子供たちにどう伝えるかですが、「図書館の本は再エネの電気を売ってできたお金で買ったから『再エネ文庫』という名前にしたんだよ」とか言えるような「バイオマス発電の村」に将来的にはしていきたいです。
  • 柏木マスタープランは作ったけど、未だに事業化に至っていない自治体がたくさんあります。こうした自治体こそ私たちが相談に乗り実現に導くことが大事だと思いました。
  • 藤村本日の様々な提言を生かし、地域から日本を変えていきたいと考えています。

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